世界一の光学機器メーカー
Carl Zeiss(カール・ツァイス)

顕微鏡の製造の職人見習いから始めたカール・ツァイス。大学で幅広い学問を学び、世界有数のカメラメーカーたちが認めざるを得ない高品質のレンズを作り上げました。また、人脈に恵まれ、没後も労働時間に革命を起こした者、後のライカを生んだ者も含む精鋭集団となりました。今も愛され続ける彼を取り巻く人々のバックグラウンドにも着目してご紹介していきましょう。

カールツァイスはツァイス・イコンの原点

世界一の光学機器メーカー、カール・ツァイス(Carl Zeiss)を創建したカール・フリードリヒ・ツァイス。彼がドイツ・イェーナで顕微鏡の製造を始めたのは1846年のことでした。職人見習いとして働く傍ら、フリードリヒ・シラー大学イェーナで幅広い学問を学んだツァイスのつくる顕微鏡は高い評価を受けました。
さらなる品質向上のため数学的計算に基づく設計を必要としたツァイスは、イェーナ大学の講師エルンスト・アッベに協力を求め、76年に共同経営者とします。
88年にツァイスが亡くなったあと、アッベの主導で91年にはすべての株を財団所有としてカール・ツァイス財団が生まれます。14時間労働が主流だった時代に、8時間労働制を1900年に実現、また技術的価値の高い発明に関しては特許を取らず公開することを決め、労働環境や科学技術の進歩に貢献します。ツァイスには多くの技術者が集い、そのなかにはのちにライカを生んだオスカー・バルナックらもいました。
ツァイス財団は映画撮影カメラのレンズやスチールカメラのレンズにも手を広げていきます。カメラ自体の製作にも乗り出し、ドイツのメーカーの大同団結でライカに対抗すべく、26年にツァイス・イコン(Zeiss Ikon)社を立ち上げます。32年発売のContax Iから始まったシリーズは、やがてライカと人気を二分するブランドとなっていきます。
しかし、第二次世界大戦のドイツ敗戦によりツァイス・イコンは東西に分裂。西側のツァイス・イコンは戦前のContaxIIを小型化したContax IIaを生産、59年(60年とも)には一眼レフのフラッグシップ機Contarex Iを発売するなど一時は戦前の隆盛を取り戻しました。
ところが日本製カメラが進出、世界市場を席巻し始めます。ツァイス・イコンは、56年からフォクトレンダーと協働体制を取り始め、69年には完全合併して体力強化を図ったものの、71年にカメラ生産から撤退することになりました。
東側のツァイス・イコンは移管統合の末にペンタコンに吸収され消失しています。

多彩なZeiss Ikon(ツァイス・イコン)

ドイツカメラの雄、ライカに比べてツァイス・イコンは実に様々な種類のカメラを開発してきました。

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様々な種類を開発
高品質なレンズの後ろ盾


1929年に最初に発売されたMiroflexは折りたたみ式の木製一眼レフ。100年近く経った現在でも愛好されています。
同年発売された初のオリジナル設計製品、Ikontaはスプリングカメラで、30年(31年とも)には3×4判のIkonta 520/18(ベビーイコンタ)、34年(35年とも)には連動距離計を備えたSuper Ikonta I 530/2、49年にはライカ判のIkonta 522/24(イコンタ35、のちにContina Iと改称)、51年には非連動距離計を備えたIkonta 524/12(メスイコンタ)と、Ikontaだけでも機能やフィルムで多数のバリエーションがあります。一時期はクラシックカメラの代表的存在でした。
35mmフォーカルプレーンシャッターでは、先ほど紹介したContaxを始めに、その廉価版として34年発売のSuper Nettel Iのシリーズ、36年に発売のNettaxのシリーズへと続きます。
34年発売のIkoflexは6×6判二眼レフ(36年に後継機Ikoflex IIが発売されると、IkoflexはIkoflex Iと改称されました)。
53年発売のContaflex Iから始まるシリーズは35mmレンズシャッター式一眼レフで、人気を博し、西ドイツのカメラ市場のメインに一眼レフを押し上げました。59年(60年とも)発売のContarex Iは、フラッグシップ的存在の35mmフォーカルプレーンシャッター一眼レフ。世界で初めて、内蔵露出計がシャッタースピードと絞りに連動するカメラでした。
多彩なカメラ各々のジャンルで支持を得てきたのは、なんといっても、世界一のメーカーであるツァイスの高品質レンズの後ろ盾によるところも大きいでしょう。ツァイスのレンズは古くから多くのカメラメーカーが供給を受けており、ライカ愛好家の間でもSonnar、Biotarなどのレンズが使われてきました。

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